携帯小説風「こころ」がやたらとおもしろい件

934 :名無しさん@八周年:2007/08/13(月) 18:14:47 ID:6OOLMw7v0
「こころ」携帯小説

 一

 アタシはその人をいつも「センセ」と呼んでいた。だからここでもただセンセと書くだけで本名は秘密。
これはバレちゃうとか気にしてるんじゃなくて、アタシにとって自然だから。
アタシはその人のことを思い出すたびに、すぐ「センセ」といいたくなる。
小説を書いていても気持ちは同じ。イニシャルとかもわざとらしいからヤダ。


 アタシがセンセと知り合ったのは鎌倉。その時アタシはまだフリーターだった。
夏休みに海に行ったメル友から「遊ぼうよ」ってメールが届いたからアタシはバイトして
お金を貯めて、遊びに行った。お金が貯まるのに3日かかった。
でもアタシが鎌倉に着いてから3日もしないうちに、メル友は家族から「帰ってこい」
っていうメールを受け取った。メールには「ママが病気だから」って書いてあったけど、
そのコは信じなかった。そのコは前から地元の親とかに「彼氏と別れろ。別れないなら結婚しろ」って言われてた。
そのコはさすがにまだ結婚には若すぎだし、それに、そもそもそのコにはそんな気がなかった。
それで、夏休みになったら地元に帰るはずだったのにバックレて東京の近くで遊んでたんだ。
そのコはメールをアタシに見せて「どうしよう」って相談してきた。アタシにはどうしていいか分からなかった。
でも、マジでそのコのママが病気なんだったら、ちゃんと帰ったほうがいいと思った。
それでそのコは結局帰った。アタシがせっかく来たのにひとりぼっちになった。


310 :名無しさん@八周年:2007/08/13(月) 20:40:20 ID:6OOLMw7v0

タピオカでけたー。

「こころ」携帯小説版 vol.8

 四

 アタシは月末になって東京に帰った。センセの別荘を出たのはそのもっと前。アタシはセンセと別れる時に、
「メアドとケーバン聞いてもいい?」と聞いた。センセはソッコーで「別にいいよ」って言っただけだった。
その時アタシはセンセと親友になったつもりだったので、センセからもっと濃い言葉を期待してたのが実際のところ。
だから、その物足りない返事がアタシの自信を傷つけた。


 アタシは似たようなことでよくセンセに失望させられた。センセはそれに気づいてるようだけど、でも全然気づいてないよう
にも見えた。アタシはなんどもちっちゃい失望を繰り返しながら、でもセンセのことを嫌いになる気にはなれなかった。
っていうか逆に、不安になるたびに、もっと前に進みたくなった。もっと前に進めば、アタシの期待しているあるモノが、
いつか目の前にカンペキな形であらわれるんじゃないかって思ってた。アタシは若かったんだ。でも誰でもいいってこと
じゃなかった。アタシはなんでセンセに対してだけこんな気持ちになるのか分からなかった。それが、センセが死んじゃった
今になって、初めて分かってきた。センセは始めからアタシを嫌ってたんじゃない。センセがたまにアタシに見せたシカト
っぽい態度や冷たい行動は、アタシを遠ざけようとする「ウザい」という表現じゃなかったんだ。自分に自信の無いセンセは、
自分に近づく人たちに、「近づくほど大した人間じゃねえよ」ってメッセージを込めてたんだと思う。人が仲良くなろうとしても
どうでもいいって感じのセンセは、人を軽蔑してたんじゃなくて、自分を軽蔑してたんだ。
http://news22.2ch.net/test/read.cgi/newsplus/1186972596/
http://news22.2ch.net/test/read.cgi/newsplus/1186996556/
(「【携帯小説】“女子中高生携帯作家”の小説、「援交・ホストと恋愛」ネタばかりでバカバカしい? 「感動して一晩中泣いた」と同世代は共感★6」「【携帯小説】“女子中高生携帯作家”の小説、「援交・ホストと恋愛」ネタばかりでバカバカしい? 「感動して一晩中泣いた」と同世代は共感★7」より)

 かわゆすww。漱石ケータイ小説は、ほかの要素はぜんぜん違うとしても、ロスト・ジェネレーション風のひっかくような乾いた虚無感に共通するところがあるのかもね。フィッツジェラルドとか、あとはサリンジャーやオースターなんかもケータイ小説ぽく焼きなおしてみたら、意外とハマるかも。音楽でいえば、携帯小説はたぶん青春パンクスにあたるんだろうな。漱石携帯小説風に翻案したのがこれだけおもしろいならば、リストの超絶技巧とかをグリーンデイやブルーハーツ風にしてみるのもいいかもしれない。小説も音楽も、どちらも三時間ぐらいで飽きるような気はするけど。
 ついでにメモ。他時代なのに似たような思想や世相があることは、すでになんとかイズムとかいう呼び方があるのかは知らないけれど、おもしろい。ジャン=ジャック・ルソー王羲之陶淵明とデイヴィッド・ソローは、ぜんぶまとめて広義のヒッピーだと思う説。陶淵明風ソローとかグレイトフル・デッド竹林の七賢とかやったら、これはほんとに互換性があって楽しそうだw。