ヘロデ王のお墓もみつかったらしい

ヘロデ大王の墓を発見=イスラエル

 【エルサレム7日時事】イスラエルヘブライ大学は7日、エルサレム近郊のヘロディウムで、紀元前1世紀にローマ帝国支配下古代イスラエルを統治したヘロデ大王の墓が見つかったと発表した。
http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2007050800075

 ヘロデ大王(Herod the Great)には、ローマのオクタビアヌス帝と仲良くしてユダヤを立派に統治したり、便利な建築物を整備したりと多くの良い業績があると思うんだけど、聖書では超悪役の王様として扱われているので、聖書至上主義みたいなイメージのあるイスラエルにヘロディウムという街があるっつー意外な寛容さにまず驚き。フラウィウス・ヨセフスの『ユダヤ戦記』によれば、ヘロデ大王はものすごい病気になって没したんである。

病気は全身に広がり、苦痛は様々な形であらわれた。高熱ではなかったが発熱し、全身の皮膚がたまらなくかゆくなり、腸はたえまなく痛み、足は脚気のように腫れ、下腹部は炎症を起こし、陰部は腐敗して蛆虫を生じ、そのうえ喘息のために呼吸困難におちいり、四肢がことごとく硬直した。

 こえぇぇぇぇ!! 要するにペニスが腐って亡くなったということだから、たいへんに気の毒なことである。お墓の中を見られれば、この超こわい病気がなんだか調べられたりするんだろうか。糖尿病かなぁ。ああ、現代人でよかった。

ヘロデ王とかの歴史覚え書き

 預言者ヨハネの首をちょんぎったヘロデ公はこの王様の息子で、ヘロデ・アンティパス(Herod Antipas)というらしい。
 ヘロデ王(Herod the Great)にはアンティパス以外にも三人の息子がいたので彼は後継者問題に悩み、彼が没した後は結局兄弟四人で亡き父の領土(ユダヤ)を四分割(テトラルキア)して、みんながそれぞれの領主になったらしい。その三人の兄弟のなかにヘロデ・ピリポ(Herod Philip)という人がいたんだけど、アンティパスはピリポの奥さんのヘロディア(Herodias)という女性を譲り受けて、自分の奥さんにしたんである(ちなみに伝承では、ピリポとヘロディアの娘がサロメ(Salome))。そうしたら預言者ヨハネに「兄弟の奥さんと結婚するなんてやらしいことをしてはいけない」と言われたので、怒った妻ヘロディアに「ヨハネなんてぶっ殺して!」と頼まれたアンティパスがヨハネを処刑した、という流れらしい。伝承では、サロメが母ヘロディアと共謀してヨハネを消す作戦を練って、踊りのうまかったサロメが義理の父アンティパスに踊りをおどってみせ、アンティパスが「褒美になんでもやるぞ」と言ったところで「ヨハネの首をください」と言ったことになっている。オスカー・ワイルドの『サロメ』で、彼女がヨハネの生首をお盆に乗せて持っているのはこのシーンだ。ちなみにワイルドの『サロメ』だと、サロメヨハネが好きなんだけどヨハネは宗教家で女性に振り向いてくれないので、ついにサロメが「首だけでもいいから自分のものにするわ!」とヨハネの生首を望んだ、ということになっているけど、これはワイルドの創作だそう。
 その後、ヘロディアが夫アンティパスに「ローマのカリギュラ帝に頼んで、あなたにも亡きヘロデ王と同じように王様の位を授けてもらって!」と進言し、アンティパスがその通りにしたために彼はローマに睨まれ、王様になるどころか領主の地位まで剥奪されて、なんと夫妻はリヨンまで追放されて客死したんである。ヘロデさんばっかりで分かりづらいけど、羅和辞典をひいてみたら、Herodesというのは「ユダヤの君主」といった意味になるらしい。なんつうか、歴史ですごくよくある展開の詰め合わせみたいな感じだなと思った。建築物をいっぱい作ったり、強大な隣国と上手に仲良くしたりしてよい業績を残してるけど、女性で失敗し、粛清とか性格悪いっぽいこともやってるし、宗教や後継者問題にも悩み、息子は失敗して、没後は自分の敵役が伝承でいい役になってるので悪役にされる……超あるある! 中国史とかに幾らでもいる、そういう人! やっぱ人間って、洋の東西をとわず似たようなことをしてるんだなと思った。