「三伏の候」を計算してみる

 そろそろ暑中見舞いの準備をしないとなー、めんどくせーな、とか思っています。
 暑中見舞いの冒頭にかく定型文といえば、「拝啓、三伏の候」というやつだ。この「三伏(さんぷく)」というのは「夏の盛り」ぐらいの意味かと思ってたけど、漢和辞典によれば

 「夏至のあとの三番目と四番目、および立秋後の最初の庚の日をそれぞれ初伏、中伏、末伏といい、この期間は陰気が起ころうとするが陽気に抑えられて出ることができず、蔵伏しているので暑い」

 ということらしい。
 「庚」というのは、十干という昔の中国の暦の数え方のひとつのうちの七番め。
 十干というのは下の表をみてもらえれば判るんだけど、甲乙丙……というアレです。

要素第一位第二位第三位第四位第五位第六位第七位第八位第九位第十位
漢字
読みこうおつへいていこうしんじん
和名きのえきのとひのえひのとつちのえつちのとかのえかのとみずのえみずのと
五行木の陽木の陰火の陽火の陰土の陽土の陰金の陽金の陰水の陽水の陰
 では、今年の「三伏の日」はいつになるのか、計算してみようじゃまいか。
 国立天文台天文情報センターのページによると、2007年の夏至は6月22日で、立秋は8月8日(http://www.nao.ac.jp/koyomi/yoko/2007/rekiyou072.html)。
 また、各日ごとの十干の求め方は、

十干の求め方

 修正ユリウス日/10 の余りに1を足した数が十干の位になる

補足:修正ユリウス日の求め方(フレーゲルの公式)

 グレゴリオ暦の年月日を年=y, 月=m, 日=d に代入([]は床関数)

[365.25y]+[y/400]-[y/100]+[30.59(m-2)]+d-678912=修正ユリウス日

 ※ただし1月と2月は前年の13月と14月とする。

(理科年表 http://www.rikanenpyo.jp/kaisetsu/koyomi/koyomi_011.htmlWikipedia http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A6%E3%83%AA%E3%82%A6%E3%82%B9%E9%80%9A%E6%97%A5

 こうやるらしい。これによって、2007年6月22日の修正ユリウス日
[365.25*2007]+[2007/400]-[2007/100]+[30.59*4]+22-678912=54273
になり、十干は
54273/10=5427余り3、3+1=4
で、十干の第四位は丁なので、丁だということがわかった。
 この結果を今年のカレンダーにあてはめて三伏を辿ってみると、

2007年
6/18(癸)19(甲)20(乙)21(丙)22(夏至・丁)23(戊)24(己)
25(庚)26(辛)27(壬)28(癸)29(甲)30(乙)7/1(丙)
2(丁)3(戊)4(己)5(庚)6(辛)7(壬)8(癸)
9(甲)10(乙)11(丙)12(丁)13(戊)14(己)15(庚)
16(辛)17(壬)18(癸)19(甲)20(乙)21(丙)22(丁)
23(戊)24(己)25(庚)26(辛)27(壬)28(癸)29(甲)
30(乙)31(丙)8/1(丁)2(壬)3(癸)4(庚)5(辛)
6(壬)7(癸)8(立秋・甲)9(乙)10(丙)11(丁)12(戊)
13(己)14(庚)15(辛)16(壬)17(癸)18(甲)19(乙)
 というわけで、2007年7月15日が初伏、25日が中伏、8月14日が末伏だという結果になりました。
 夏至というのは新暦も旧暦も関係ないだろうから、つまり今年の「三伏の候」というのは、7月15日から8月14日ぐらいの期間だっつーわけですね。ちなみに日本と中国の客観的な気温のデータは、5日の記事(http://d.hatena.ne.jp/syulan/20070705/p1)を参照してくらさい。
 そして結論は、「わざわざ計算するまでもなく夏はクソ暑い」と、めちゃくちゃ投げやりな感想を残して証明終わりw。△

三伏の由来(7月11日追記)

 三伏について、長文ごめ(ryさんからコメント欄で以下のようなことを教えて頂いた。ありがとうございます!(ごく一部略)

長文ごめ(ry 『ところでこの三伏
史記の秦本紀に
(徳公)二年、初伏、以狗御蠱。
   《集解》曰、孟康曰、六月伏日初也,周時無、至此乃有之。
とあるように、かなり古い由来があるようですね。
(ちなみに注釈の孟康は魏の人らしいです)


現代の日本人の感覚からすると七月中旬から八月初めの季節は、
梅雨も終わりようやく夏本番、みたいなものだと思うんですが、
旧暦の中国人の感覚だと、三伏の最後が立秋後なことからもわかるように、
夏もいよいよ終わり、さぁこれから秋だ、という時期の
厳しい残暑ということになりますね。
ここらへんの感覚の違いは注意したほうがいいかもしれませんね。


ついでに『玉燭宝典』という隋の時代に作られた歳時を扱った類書
(中国では散逸し、日本に残存。ただし九月の部分が散逸)
を調べていたら、


陳思王《大暑賦序》云、「季夏三伏


曹植大暑賦の序文の逸文を発見いたしました。
わずか四文字ですが、手元の『曹植集校注』や『全三国文』に漏れているようです(略)』 (2007/07/11 00:30)

syulan 『ありがとうございます!
なるほどー、日本でもお盆をすぎたら秋めいて、
暑くてもクラゲが出るので海水浴客がいなくなって
赤トンボが飛んできはじめる、みたいな感じがありますが、
中国大陸でもちょっとそんな感じなのかもしれませんねー。


おお、曹植たんも暑さには参っていたんですねw。
貴重な資料をありがとうございますー!
この三伏の計算は、真夏になったら
酉陽雑俎の巻七酒食にみえる
魏の鄭公愨の碧筒酒(蓮酒)の実践記事を予定しているので、
その資料にするのに、先日の年間気温の記事と
某スレの九醞酒の話と一緒に使おうと思っていますw。
「魏の正始年間」って三国時代の正始年間なのか、
それとも北魏の話なのか、どっちなんでしょうね。(略)』 (2007/07/11 00:53)