万葉集にある大伴家持の「土用の丑は鰻」の歌

 もうすぐ土用の丑の日です。「土用の丑に鰻を食う」という習慣は平賀源内がひろめたという話は有名だけど、じつは源内はゆえなく夏に鰻を食おうと言いだしたわけではなくて、もともと「夏バテには鰻でスタミナつけようぜ」という風習があったのを、土用の丑にこじつけただけという説があるらしい。
 有名なところでは、八世紀の大伴家持は、万葉集にすでにこんな和歌をおさめている。

原文
石麻呂尓吾物申夏痩尓吉跡云物曽武奈伎取喫
訓読文
石麻呂に吾(われ)物申す夏痩せに良しといふ物ぞ鰻(むなぎ)漁(と)り食(め)せ
てけと訳
「俺は石麻呂に言ってやったのさ、夏痩せにはウナギがいいらしいから、とってきて食いなって」

(『万葉集』巻十六の3853、岩波文庫

原文
痩々母生有者将在乎波多也波多武奈伎乎漁取跡河尓流勿
訓読文
痩す痩すも生けらばあらむをはたやはた鰻(むなぎ)を漁(と)ると川に流るな
てけと訳
「(夏バテして)げっそり痩せても生きていられればいいんだから、万が一にでもウナギなんかとりにいって、川に流されるなよ!」

(『万葉集』巻十六の3854、岩波文庫

 この二首は、吉田石麻呂という老有力者が夏バテして痩せたのを、若い家持がからかって詠んだものらしいw。いったい石麻呂氏は川にウナギを捕りにいけばいいのか、それとも家でのびているべきなのかw。こんな歌を千年以上も大切に愛し、学び(!)伝えてきた日本っていい国だw。