東京と中国・台湾・ウイグル・チベットなど東アジアの主要都市の月別平均気温と総降水量の比較データ&地図、すなわちまさに魚たらんとすること無かれ、あとプラハとチャペック。
気象庁のサイト(http://www.jma.go.jp/)に中国各地の月別年間平均気温と降水量の統計があったので、西晋の文学者である陸機の『答張士然』と『贈尚書郎顧彦先二首』の参考にするのに表と地図にしてみた。洛陽≒西安、華亭∈上海市松江県⊆呉で考えていいんじゃないかなー? ダメかなorz。
観測地点 | 要素 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | 平均気温/総降水量 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
日本:東京(参考) | 気温[℃] | 5.8 | 6.1 | 8.9 | 14.4 | 18.7 | 21.8 | 25.4 | 27.1 | 23.5 | 18.2 | 13.0 | 8.4 | 15.9 |
日本:東京(参考) | 降水量[mm] | 48.6 | 60.2 | 114.5 | 130.3 | 128.0 | 164.9 | 161.5 | 155.1 | 208.5 | 163.1 | 92.5 | 39.6 | 1466.7 |
中国:ハルビン | 気温[℃] | -18.6 | -14.6 | -3.8 | 6.8 | 14.4 | 20.1 | 22.8 | 21.0 | 14.5 | 5.5 | -5.2 | -14.8 | 4.0 |
中国:ハルビン | 降水量[mm] | 3.3 | 6.4 | 9.2 | 19.4 | 39.4 | 84.1 | 148.6 | 117.5 | 61.4 | 23.1 | 8.0 | 5.2 | 525.6 |
中国:蘭州 | 気温[℃] | -5.1 | -0.8 | 5.6 | 12.2 | 17.1 | 20.4 | 22.5 | 21.3 | 16.4 | 9.9 | 2.7 | -3.7 | 9.9 |
中国:蘭州 | 降水量[mm] | 1.6 | 2.9 | 9.7 | 15.3 | 33.3 | 44.1 | 67.0 | 72.9 | 44.2 | 22.0 | 3.0 | 1.0 | 317.0 |
中国:瀋陽 | 気温[℃] | -10.9 | -6.8 | 1.3 | 10.3 | 17.1 | 22.1 | 24.7 | 23.7 | 17.6 | 9.7 | 0.4 | -7.3 | 8.5 |
中国:瀋陽 | 降水量[mm] | 6.0 | 7.5 | 17.3 | 39.4 | 56.6 | 91.3 | 164.7 | 161.8 | 75.7 | 44.5 | 19.9 | 10.2 | 694.9 |
中国:北京 | 気温[℃] | -3.6 | -0.6 | 5.9 | 14.2 | 19.9 | 24.4 | 26.3 | 24.9 | 20.1 | 13.2 | 4.7 | -1.4 | 12.3 |
中国:北京 | 降水量[mm] | 2.9 | 5.3 | 8.3 | 21.4 | 33.7 | 78.6 | 185.5 | 160.4 | 45.8 | 22.1 | 7.8 | 3.4 | 575.2 |
中国:成都 | 気温[℃] | 5.7 | 7.6 | 11.7 | 16.7 | 21.0 | 23.9 | 25.3 | 25.1 | 21.3 | 17.2 | 12.1 | 7.3 | 16.2 |
中国:成都 | 降水量[mm] | 8.3 | 12.5 | 19.8 | 44.1 | 83.0 | 107.1 | 228.2 | 202.8 | 121.3 | 35.6 | 14.8 | 5.9 | 883.4 |
中国:昆明 | 気温[℃] | 8.1 | 10.0 | 13.3 | 16.7 | 19.1 | 20.0 | 19.9 | 19.5 | 17.9 | 15.6 | 11.7 | 8.3 | 15.0 |
中国:昆明 | 降水量[mm] | 14.5 | 17.0 | 19.9 | 25.1 | 93.9 | 185.4 | 204.4 | 205.4 | 121.5 | 75.9 | 43.5 | 10.7 | 1017.2 |
中国:西安 | 気温[℃] | 0.0 | 3.0 | 8.2 | 14.9 | 19.9 | 24.9 | 26.7 | 25.4 | 20.0 | 14.1 | 7.0 | 1.4 | 13.8 |
中国:西安 | 降水量[mm] | 6.9 | 10.3 | 28.7 | 42.8 | 60.0 | 54.2 | 98.6 | 70.8 | 91.7 | 60.0 | 24.8 | 7.0 | 555.8 |
中国:武漢 | 気温[℃] | 3.8 | 5.3 | 10.2 | 16.7 | 21.8 | 25.7 | 28.7 | 28.4 | 23.3 | 17.8 | 11.6 | 5.9 | 16.6 |
中国:武漢 | 降水量[mm] | 35.9 | 60.7 | 92.6 | 127.6 | 161.0 | 230.7 | 136.6 | 121.7 | 81.4 | 106.9 | 54.3 | 24.9 | 1234.3 |
中国:上海 | 気温[℃] | 4.3 | 5.3 | 8.8 | 14.5 | 19.6 | 23.7 | 27.9 | 27.7 | 23.7 | 18.7 | 12.8 | 6.7 | 16.1 |
中国:上海 | 降水量[mm] | 81.1 | 37.1 | 98.9 | 60.8 | 88.3 | 171.8 | 140.1 | 255.1 | 83.1 | 57.0 | 46.4 | 35.3 | 1155.0 |
台湾:台北 | 気温[℃] | 15.2 | 15.6 | 17.7 | 21.8 | 24.5 | 27.3 | 28.9 | 28.7 | 27.0 | 24.2 | 20.2 | 17.1 | 22.4 |
台湾:台北 | 降水量[mm] | 95.6 | 191.7 | 178.9 | 193.3 | 247.4 | 310.8 | 272.5 | 299.5 | 343.0 | 145.7 | 97.8 | 76.2 | 2452.4 |
チベット:ラサ | 気温[℃] | -1.8 | 1.6 | 4.9 | 8.3 | 12.1 | 15.9 | 15.7 | 14.8 | 13.0 | 8.7 | 2.8 | -1.1 | 7.9 |
チベット:ラサ | 降水量[mm] | 0.6 | 0.9 | 2.2 | 6.8 | 28.3 | 70.1 | 113.2 | 113.8 | 60.2 | 10.5 | 1.4 | 1.1 | 409.1 |
ウイグル:ウルムチ | 気温[℃] | -12.4 | -10.2 | -1.6 | 10.4 | 17.1 | 21.9 | 24.2 | 23.0 | 17.0 | 8.2 | -2.2 | -9.5 | 7.2 |
ウイグル:ウルムチ | 降水量[mm] | 9.1 | 10.1 | 18.5 | 33.5 | 35.1 | 34.5 | 28.7 | 19.7 | 25.8 | 24.5 | 17.4 | 12.8 | 269.7 |
ウイグル:カシュガル | 気温[℃] | -5.1 | -0.7 | 7.5 | 15.5 | 19.8 | 23.3 | 25.6 | 24.2 | 19.4 | 12.1 | 4.0 | -2.9 | 11.9 |
ウイグル:カシュガル | 降水量[mm] | 2.1 | 4.2 | 7.4 | 5.0 | 8.7 | 7.8 | 6.9 | 8.1 | 5.6 | 2.4 | 1.8 | 1.8 | 61.8 |
(参考データ:日本はhttp://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/view/nml_sfc_ym.php?prec_no=44&prec_ch=%93%8C%8B%9E%93s&block_no=47662&block_ch=%93%8C%8B%9E&year=&month=&day=&elm=normal&view=、他地点はhttp://www.data.jma.go.jp/gmd/cpd/db/monitor/nrmlist/allclimdata.htmlより)
しかし表をみてみたら、上海は台北はおろか東京よりも雨が少ないという衝撃の事実に気づいて笑った。古今のいろんな中国の人が呉越の風土をうたった文章をみていると、上海はすっごい雨の豊かな滔々とした水郷地帯って感じがするのに、年間降水量にしたら台北や、ましてや東京にも及ばないとは。七つの濠と運河にかこまれた蘇州城とか、本当はどんなもんだったんだろう? もしかしたら、中国は広大な平地が続くので、山だらけの日本や台湾のように降った水がダーっと海に流れていってしまわないから、降水量のわりには陸地部分に留まる(?)水が多いのかもしれない。
でも、月平均の降水量でみてみると、東京が春と秋に降ったぶんで稼いでいるだけで、梅雨から夏にかけての雨は東京も上海もそう変わらないことがわかる。むしろ、八月の真夏の雨は上海のほうが多くて、東京の1.5倍以上ふっているんだから、これはかなりすごい。台風か夕立か、その両方かな? きっとすごいどしゃぶりなんだろう。それに何だかんだといっても、西安よりは倍も雨が降るのだ。自分は東京から北京に行ったときには、あまりの乾燥っぷりに喉を壊して帰ってきたけれど、上海出身の陸機にも洛陽はすっごい乾燥したところに思えたんだろう。
台北でチャペックのことを思い出した
ちなみに自分が台北に行っていたときには、こんなに雨の多いところもないなとびっくりした。しかし台北の雨は南国的なスコールのようなもので、ざーっと降ったあとには必ず東京よりも明るく晴れるので、蒸し暑いけれど陰気ではないのがよかった。そして台北は暖流に囲まれた亜熱帯の島国で一年中湿度が高いので、真冬でも空気の冷える深夜には空気中の水分が結露して、暖かい街が毎夜霧のような雨に包まれるのだ。カレル・チャペックが『園芸家12ヶ月』という本で、こう書いている。
すこしでもご利益があるものだったら、園芸家は毎日ひざまずいて、こう言ってお祈りをするにちがいない。
「神さま、どうぞ毎日、夜中から午前三時まで、土の中によくしみこみますようにゆっくり、あたたかい雨をお降らせくださいますよう。ただし、ムシトリビランジだとか、アリッサムだとか、ハンニチバナだとか、ラヴェンダーだとかいったような、全知全能のあなたさまが、乾燥を好む植物としてご存知の花には、雨をお降らせくださいませんよう──お望みでございましたら、一枚の紙に書いて差し上げますでございます。なお一日じゅう日があたりますように、どうぞお願いいたします。しかし、どここもかしこも同じように日がさしませんように……(略)」
だって、エデンの園では、じっさいそのとおりだったにちがいない。そうでなかったら、エデンの園にあんなに草木がよく茂るはずはない。どう思います、諸君?
彼はチェコの人だったから、このような冗談をいったんだろう。でも、自分が台湾にはじめてついたのは真冬だったんだけど、その日の夜にこの真夜中の暖かい霧のような雨を見たときには瞬時にこのチャペックの一節を思い出し、ああ、台湾というのはなんと土地の豊かな、植物に恵まれた島なんだろうと大変に感心して、治安のいい夜の街のまんなかで、いつまでもこの傘もいらない柔らかい雨にあたって楽しんでいた。地元の人もみんな傘などささずに薄着で、夜市の屋台で買い物をしたりご飯をたべたりしていた。それでもまったく風邪をひかないほど、台北は真冬でも暖かいんである。すばらしいところだ。ただこれは冬の話で、夏の台北は卒倒するほどに蒸してくそ暑く、雨が天の底が抜けたかとばかりに景気よく降り、そして日差しが東京の比ではなく強い。すなわち、ずぶ濡れで蒸し焼きで黒こげである。
ちなみに、上の気象庁のサイトでプラハのデータも調べてみた。
観測地点 | 要素 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | 平均気温/総降水量 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
チェコ:プラハ | 気温[℃] | -1.7 | -0.6 | 3.5 | 7.7 | 13.0 | 15.7 | 17.6 | 17.4 | 13.1 | 8.0 | 2.6 | 0.0 | 8.0 |
チェコ:プラハ | 降水量[mm] | 22.4 | 19.4 | 29.5 | 27.9 | 70.5 | 71.9 | 73.1 | 61.3 | 40.0 | 30.1 | 30.1 | 26.1 | 502.3 |
とか言っているうちに、四日から降りまくった梅雨の土砂降りが止んだっぽい。きのう神奈川南部には一日で60mmぐらい雨が降ったらしいから、一日で七月平均の1/3ぐらい降ったんだなぁ。今日じゅうに七夕の笹の準備しなきゃ(きのうまで忘れてた)。
上海と河南省の詳しい天気の様子(7月10日追記)
コメント欄で、長文ごめんさんに以下のようなことを教えて頂いた。ありがとうございます!
長文ごめん 『どこかに、各省ごとの気候について簡単に説明した物があったはずと思いつつ、
先程発見いたしました。
大陸から出ている『分省中国地図集』(中国地図出版社、2000年)です。
地図自体は2000年発行ですが、参照した気象データは1951−1970年のものだそうです。
上海
一月平均気温…3℃
七月平均気温…28℃
年間降水量…1100mm
六月中旬から七月上旬の20日間程の梅雨期あり
七月から九月は台風シーズン
河南省
一月平均気温…-2℃〜2℃
0℃の等温線が淮陽・鞏義・崇県を通る
七月平均気温…26〜28℃
年間降水量…700〜1100mm
1000mmの等値線が淮河の本流に沿って通る
夏期の雨が年間降雨量の55%
四・五月…乾燥した熱風(乾熱風)が吹く
七・八月…暴雨(にわか雨?豪雨?)
九・10月…雨がち(連陰雨。地雨性の雨)
洛陽は0℃の等温線よりやや北にあるので1月の平均気温は0℃を下回りそう
降雨量1000mmの淮河は河南省の南端に近い部分を通っているので河南省北部の
洛陽はかなり雨が少ないけど、長安よりはましというかんじだろうか。
ちなみに長安のある
陝西省関中地区
一月平均気温…-1℃〜-3℃
七月平均気温…24℃以上
年間降雨量…750mm
春末から夏の初めに乾燥した熱風が吹く
うーん、最近のデータを基にしている気象庁のものとは
ずれがあるような…
やっぱり温暖化のせいですかね』 (2007/07/10 05:05)syulan 『ありがとうございます!
なるほどー、上海の気候は日本に似ているんですね。
洛陽や開封は、長安よりはずっと雨が多いんですねー。
洛陽の陸機に「眷言懐桑梓、無乃将為魚」と詠ませたのは、
この夏の暴雨というやつなんでしょうね。
大陸は土地が平べったいぶん、
日本のように水がすぐに海に逃げて行かないので、
いちど水が溢れると、何日も浸水が引かないのかもしれませんね。
日本でもどこでも、水の出る地域の方はこれからの時期、
乃ち将に魚為らんこと無きようにお気をつけくださいm(_ _)m』 (2007/07/10 14:19)